八尾町福島一区コミュニティセンターの基本設計を島崎英雄棟梁が行いました。
延べ約320㎡、梁間8m、桁行16mの空間を伝統構法で造り上げました。
集成材や金物を使用する工法や一般的な公共施設で採用されるRC造、S造での大スパン構造は存在しますが、木造伝統構法では他に例を見ないものです。

現在多用されている工法は使用されはじめて数十年という歳月しか経過していません。
しかし木造伝統構法は比較にならないほどの実績が存在します。
集成材は接着剤の耐用年数に頼り、木に穴をあけ金物で固定します。
金物が腐食する事で、木部との接合強度は著しく低下します。
馴染むはずの無い材料で構成されることに島崎英雄棟梁は疑問を持ち続けています。

大スパン構造を可能にしたのが「簪(かんざし)工法」と呼ばれる大工技術です。
主材を両側から上下段の梁で挟みこみ(蟻仕口による接合)、その接合部分を「簪(かんざし)工法」で固めています。

主材と上下段の梁に囲まれた部分に厚板を落し込み、鉛直平面の剛性を高めています。
この工法の採用により、斜材(方杖)を使うことなく大スパン空間を構成する事が可能となりました。
またホール以外の部分にも伝統構法による木組みが用いられています。
掛け木を金輪大栓継ぎで繋ぎ、渡り顎で組み富山の重い雪にも耐えうる強固な小屋組を成しています。

八尾町福島一区コミュニティセンター施設には
「地域住民の憩いの場」「スポーツ・文化交流の場」等の役割や、
「おわら 風の盆」の演舞場という大きな機能が求められます。
木と白壁の醸しだす柔らかな空間と八尾型民家特有のデザインがそれらの要求を充たしていきます。
また地球環境保全、町並み再生、景観保全等の社会的な要求も存在します。
そして職藝学院マイスターとしての大工技術継承の目的もあり、
地域材や自然素材の使用と木造伝統構法による建設にこだわり、基本設計をまとめました。

完成後、風の盆のポスターにも採用され、多くの観光客がコミュニティセンターで行われた踊りを堪能されました。